杉野英彦 大阪大学
特定領域研究・分子脳 2005

中枢神経細胞で高発現するレトロトランスポゾンLINE1 の神経細胞での機能解明
研究代表者 杉野 英彦
研究分野:
研究種目:特定領域研究
研究機関:大阪大学
研究内容:https://kaken.nii.ac.jp/d/p/17024037.ja.html
L1(LINE-1)は、哺乳類ゲノムの30%を占める分散型反復配列である。生殖細胞での、転写・逆転写・再挿入(レトロトランスポジション)により、そのコピー数を増やしてきた。そのほとんどのものがすでに機能を失い、ごく少数のものだけがレトロトランスポジション可能であるとされている。そのため、L1はパラサイトなものであり、体細胞における機能に関しては議論されてこなかった。そこで我々は、L1の脳神経細胞での機能解明に着手した。本年度は、L1の脳神経細胞での詳細な発現を検討し、下記条項を明らかにした。
1,L1が高頻度に発現している組織の検討
脳4領域(嗅球、海馬、大脳皮質、小脳)、心臓、肺、腎臓、肝臓等、においてL1の発現をRT-PCR、ノーザンブロットで調べたところ脳4領域における強い発現を見出した。
2,L1のサブタイプの同定
上記RT-PCRで得られたPCR産物60個をクローニングしシークエンス解析した結果、34個がTf型、13個がA型であった。それらのほぼ全てが(合計47個中45個)ORFを保持していることを明らかにした。
3,L1の脳での発現頻度
脳組織由来のcDNAライブラリーを構築し、スクリーニングを行った結果、脳組織での全転写産物の2000個に1個がL1であった。さらにランダムに選んだ12クローン中、10クローンが全長鎖であり、その半分にあたる5クローンが完全なORFを保持するTf型であることを明らかにした。
4,L1の脳での詳細な発現領域の検討
In-situハイブリダイゼーションの結果、成体マウス脳では嗅球全領域、大脳皮質2?3層、海馬(CA1?3,DG)、小脳顆粒細胞での強い発現を見出した。また胎生13週の時ではCortex, Ganglionic eminence, Midbrain, Hind brain, Neural tubeでの強い発現を見出すことができた。
研究成果報告書
リンク先
https://cbsn.neuroinf.jp/modules/xoonips/download.php/%E6%9D%89%E9%87%8E%E8%8B%B1%E5%BD%A6+_2005%E7%AC%AC4%E9%A0%98%E5%9F%9F-29.pdf?file_id=437